皆さんは「自分の理想の体型」ってありますか?
もうちょっと身長がほしい!
あと少しだけ細くなりたい!
ガッツリ筋肉つけたい!
などなど、誰もが一度は自分の体について考えたことがあるのでは。
それはどうやら芸術家も同じだった(かどうかは知らない)ようで、こんな絵を書いた画家がいます。
誰もがどこかで見たことがあるのでは?というぐらい有名な絵ですね。
レオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」です。
人間の体から手足が4本生えているように見えるので「エヴァ13号機じゃね?」と思うかもしれませんが、これは手足を動かしたときの様子を表したもので、別に手足が4本もあるわけではありません。
要はこういうことです。
手をぶんぶんしてるから4本に見えるでしょってことです。
ウィトルウィウス的人体図も手足をぶんぶんしてるって思って見ると笑えてきます。
(ぶんぶん!!)
実はというかなんというか、このサイトもウィトルウィウス的人体図にあやかったアイコンを採用しておりまして。
世界的に見てもおそらく初めてピクトグラムでウィトルウィウス的人体図を表現した先駆者だと勝手に自称しています。
ウィトルウィウス的人体図を採用したのは、「なんかカッコいいから」というザ・中二病的な考えの結果なのですが、将来このブログが有名になってインタビューを受けたときに、
Q「なんでアイコンがウィトルウィウス的人体図なの?」
A「なんとなくカッコいいからです」
ではいかにも締まりません。
というわけで、もっともらしい理由を後付けすべく、ウィトルウィウス的人体図について色々と調べた結果をざっくりご紹介するのが今回の内容です。
ほんとざっくり紹介するだけなので、内容の正確性はあまり保証できません。
雑学のひとつとして、ざっくりお読みください。
そもそも「ウィトルウィウス的人体図」ってなに?
そもそもこの絵ってなんなの?というところから話は始まります。
ウィトルウィウス的人体図は、1490年ごろに、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いたデッサンです。
デッサンには円と正方形、その中に男性の裸体が描かれており、異なる位置に手足があります。
これが何を表しているのか?というのが気になるところですが、それには長い歴史を遡らなければなりません。
まあこの辺も詳細に調べると本がいっぱい書けるレベルっぽいので、超ざっくり紹介します。
天才は考えた。「人体は宇宙だ」と。
「ウィトルウィウス」というのがまず謎ですが、結論から言うとこれは人の名前です。
ウィトルウィウスさんは古代ローマ時代の建築家です。
古代ローマ時代ってのは、ざっくり言うとテルマエ・ロマエ的なやつです。
テルマエ・ロマエは西暦130年くらいの時代で、ウィトルウィウスさんは紀元前70年頃の人なので、テルマエ・ロマエよりはもう少し前にいた人になります。
ウィトルウィウスさんは『建築十書』という建築に関する本を書いた人で、この本は世界最古の建築書と言われています。
それだけ凄い天才ということですね。
そんな天才でも悩むときは悩みます。
当時から神殿建築が盛んでしたが、どうしたらカッコよくて立派な神殿建築ができるのか、ウィトルウィウスさんにはイマイチわからなかったのです。
そんな天才さんは考えました。
「人体は宇宙だ。」
と。
「人体の中心は宇宙の中心である。神殿建築も人体と同様に調和したものであるべきだ。」
と。
(いやわかんねーよ。)
ざっくり噛み砕くと、人の体には色々な箇所がありますが、それぞれが調和の取れた比率で構成されている、と考えました。
例えば、
・肘から指先の長さを4倍すると身長と同じ
・手のひらの幅を24倍すると身長と同じ
・顎から額までの長さは手の長さと同じ
などです。
古代ローマなので当然スペースシャトルは飛ばせませんが、天体観測なんかをしながら宇宙の研究は進められており、宇宙は調和のとれた完璧な存在だと信じられていました。
人の体も神様から与えられたものであり、宇宙と同じく調和の取れたモノであるはずです。
で、神殿も神様をまつるモノですから、宇宙や人の体のように調和がとれていなくてはならない、と考えたんですね。
宇宙は正十二面体だとか色々考えられてましたが、いかんせん規模がデカいので観測には向きません。
そこで、一番身近でしかも調和のとれている人体を参考にして、建築に活かそうとしたのがウィトルウィウスさんの考えだったわけです。
でも、ウィトルウィウスさんは絵が描けるわけではなかったので、文章で「いかに人体は調和が取れているか」ということを書き連ねるしかありませんでした。
「『人体は宇宙』だと…?まじかっけえ。」
さて、時計の針はそこから一気に1400年ほど進み、ルネサンス時代に突入します。
ルネサンス時代の建築は、ローマの古代建築の研究を基礎にしています。
それまではあまり見向きされなかった古代建築が見直されるようになったのです。
そこで注目されたのがウィトルウィウスさんの『建築十書』。
古代建築の思想を1から10まで書き連ねているこの著書は、ルネサンス建築に大きな影響を与えました。
そんな時代に活躍していたレオナルド・ダ・ヴィンチは、まあ言葉では言い尽くせない天才でして、科学や芸術など研究分野の視野が広く、人と自然の調和というテーマに挑戦していました。
そんなときに出会ったのが、やっぱり『建築十書』。
ページを読み進めると、
「人体の中心は宇宙の中心と同じである。」
なんて書かれてたので、「なにこれ超カッコいい!」となりました。
人と自然の調和というテーマには、うってつけの題材だったわけですね。
で、ダ・ヴィンチは絵の才能もあったので、『建築十書』に書かれている人体の調和比例を絵に描き起こすことにしました。
「よーし、ダ・ヴィンチ頑張っちゃうぞッ!」
と意気込んで(いたかどうかは知らないが)できた絵が、冒頭にあげたこのデッサンというわけ。
これで、ウィトルウィウス的人体図とレオナルド・ダ・ヴィンチがつながりました。
「ウィトルウィウス的人体図」を超ざっくり解説
ウィトルウィウス的人体図の成り立ちがわかったところで、「ウィトルウィウス的人体図」が表現している内容を、超ざっくり解説します。
人間が両手両脚を広げて仰向けに横たわり、へそを中心に円を描くと指先とつま先はその円に内接する。さらに円のみならず、この横たわった人体からは正方形を見いだすことも可能である。足裏から頭頂までの長さと、腕を真横に広げた長さは等しく、平面上に完璧な正方形を描くことが出来る。
─『建築十書』より
ウィトルウィウス的人体図の円・正方形・男性の裸体と4本の手足は、この一節にまとめられます。
ウィトルウィウス的人体図は、以下の2点が大きな特徴です。
・両手を真横に伸ばした長さは身長と同じであり、正方形を描くことができる
その他にも、「顎から額、髪の生え際までの長さは身長の1/10で、…………」など延々と書かれている人体の調和の特徴を余すところなく絵に取り入れています。
ダ・ヴィンチは、「人間は宇宙のひな型である」と信じて、このデッサンを書き上げたと考えられています。
現在、ウィトルウィウス的人体図は、主に医学の分野でシンボル的に用いられることが多く、なんとフィギュアまで発売されるようになりました。
よもやま話:ウィトルウィウス的人体図は黄金比なのか?
さて、このウィトルウィウス的人体図を使ったものとして有名な小説に『ダ・ヴィンチ・コード』があります。
この小説からかどうかは知りませんが、
「ウィトルウィウス的人体図には黄金比が隠されてる!」
という説がかなりの勢いで拡散しています。
ちなみに、黄金比というのは、人間の目で見て気持ちよく感じる比率のことです。
僕たちが普段目にしているデザインの多くに、黄金比が登場しています。
古くはパルテノン神殿から、ポスター、企業のロゴ、果ては自然界の存在するもの(台風、ひまわり、カタツムリの殻etc…)まで、黄金比だらけなのです。
この黄金比は、「1:0.618」となっています。
黄金比を詳しく解説しようとすると数式が出てきて僕の限界を超えるので全部省略します。
で、人体図の方に話を戻すと、ウィトルウィウス的人体図に描かれている円と正方形に着目し、
「“円の半径”と”正方形の辺の長さ”が黄金比になっている」
と説明するものが多いです。
ところが、ちゃんと計算してみると、ダ・ヴィンチの描いた円は黄金比からズレている、とする説が唱えられています。
またもや評論はざっくりカットしますが、数学的にダ・ヴィンチの描き方を再現しようとすると、どうしても黄金比からズレるらしいのです。
本物はベネチアの美術館にあり、しかも常設されているわけではないし、実寸を図ることはできないのでなんとも言えないのですが、「理想的」とされるダ・ヴィンチの人体図は、実は黄金比なんて隠されていないのかもしれません。
案外適当なもんです。
念のため誤解のないように書いておくと、仮に黄金比が成り立たないとしても、その他のいくつもの要素が数学的に美しい比率で描かれており、ある意味「理想的」な人体図であるということはできます。
ちなみに、ルネサンス時代にもう一つ栄えていたのが芸術、特に音楽の分野です。
いわゆる西洋音楽というやつなのですが、音楽の中にも様々な比率が登場します。
そこに出てくる比率が、かなりの数この人体図で表現されているらしく、とても興味深いものがあります。
が、その話はまた別の機会に……。
まとめ:結局どう説明するの?
ウィトルウィウス的人体図についてざっくり分かったのはいいのですが、本題の
「なんでこのサイトのアイコンはウィトルウィウス的人体図をモチーフにしているのか」
というクエスチョンに対する適切な回答が用意できていません。
分かったのは
・現在はモチーフとして、医学を中心に様々な分野で用いられている
・天才が考えることはヤバい
ぐらいですね。
うーん、一応「次の時代の人間らしさ」というもっともらしいテーマを掲げているので、「理想の人間を追い求める」という思想はウィトルウィウス的人体図と同じと言えなくもなさそうです。
そんなわけで、今度からは
「人間の理想を追い求めたウィトルウィウス的人体図にピンときちゃったからです」
と答えるようにします。
「ただの雑記ブログなのになにご大層な答えしちゃってんのよ」
というツッコミはなしで……。
コメント